ドナルド・キーン

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ドナルド・キーン(Donald Lawrence Keene, 1922年6月18日 - 2019年2月24日)は、アメリカで生まれた日本文学研究者、歴史家、日本文学翻訳者。コロンビア大学名誉教授。東京都名誉都民、柏崎市名誉市民、東京都北区名誉区民。通称・雅号として漢字で「鬼怒鳴門」(Kīn Donarudo)を使用する。日本文学を世界に発信した人物として知られている。

略歴[編集]

アメリカ・ニューヨーク出身。コロンビア大学在学中に源氏物語と出会い、日本文学への関心を抱く。アメリカ海軍日本語学校に入学し、第2次世界大戦中は通訳官を務めた。戦後、コロンビア大学院、イギリスのケンブリッジ大学で学び、1953年京都大学大学院に留学し、近松門左衛門松尾芭蕉について研究する。太宰治三島由紀夫安部公房らの作品を英訳し、さらに三島由紀夫、谷崎潤一郎川端康成司馬遼太郎ら当時の日本を代表する作家らと交友し、日本の文化や歴史、能や文学などの芸能を海外に紹介した。1986年にはコロンビア大学に「ドナルド・キーン日本文化センター」が設立されている。

晩年には明治天皇が日本の近代化に果たした役割に注目し、隠された史実の掘り起こしに力を注いだ。このような数々の活動から菊池寛賞など多くの賞を受賞している。長年、ニューヨークと東京を往来して活動を続けていたが、2011年東日本大震災後は日本に永住することを表明し、2012年日本国籍を取得する。著書には日本文学に関与する物が非常に多い。

2013年新潟県柏崎市に書斎を再現するなどした「ドナルド・キーン・センター柏崎」がオープンした。芭蕉ゆかりの埼玉県草加市には2012年に近世の俳人や作品の評論を対象にした「ドナルド・キーン賞」を創設した。

2019年2月24日午前6時31分、心不全のため、東京都台東区病院死去した。96歳没。

経歴[編集]

  • 1922年6月18日、アメリカ合衆国・ニューヨークブルックリンミッドウッド地区で貿易商の家庭で育つ。
  • 1931年、父とともにヨーロッパを旅行。その後、両親の離婚により母と暮らす。
  • 1938年、飛び級により、16歳でコロンビア大学文学部に入学。
  • 1940年アーサー・ウエーリ訳『源氏物語』に感動し、それ以来、日本文学や日本文化の研究を志す[1]
  • 1942年、コロンビア大学で学士号を得る。
  • 1943年、ボウルダーの海軍日本語学校とカリフォルニアのバークレイで日本語を学ぶ。第二次世界大戦中は太平洋地区の情報士官として働く。太平洋戦線のアッツ島キスカ島作戦に参戦。
  • 1944年ハワイ捕虜収容所で音楽会を開く。
  • 1945年3月フィリピンレイテ島から沖縄戦に従軍し、日本軍捕虜の通訳官を務める。
  • 1946年日本語の知識を棄てないためコロンビア大学へ戻る。
  • 1947年、コロンビア大学で修士号を得る。ハーバード大学に移る。
  • 1948年秋、ケンブリッジ大学で研究を開始するため、イギリスに渡る。ケンブリッジ大学に転じ、2つめの修士号を得る。コープス・クリスティカレッジのフェ-ローとなり、1949年から1955年まで講師となり研究を継続した。
  • 1949年、コロンビア大学からPhd(博士号)を得る。コロンビア大学では角田柳作の指導を受けた。
  • 1952年、ケンブリッジ大学で「日本の文学」について5回連続講義を開く。
  • 1953年8月、京都大学大学院に留学(フォード財団の奨学金による)。
  • 1955年、「奥の細道」を旅行する。5月、2年間の日本留学を終え、アメリカに帰国し、9月にコロンビア大学助教授。日本文学と日本語を教える。
  • 1960年、コロンビア大学教授。
  • 1965年中央公論社版『日本の文学』編集委員。
  • 1969年メキシコ大学で1ヶ月間日本文学を教える。
  • 1971年1月、オーストラリア・キャンベラ国立大学における第28回オリエンタリスト会議で「三島由紀夫」を講演。
  • 1973年10月より日本航空外国人職員向け広報「OHZORA」に紀行文を連載、京都、金沢、伊勢、萩、弘前、桜井、宇治、長崎、福岡、奈良、函館、下田の紀行文を連載。
  • 1978年、ケンブリッジ大学から文学博士号授与。
  • 1981年、ヨーロッパ講演旅行(イギリス、フィンランド、ソ連、ポーランド、デンマーク
  • 1982年、朝日新聞社客員編集委員。(1992年まで)
  • 1986年、コロンビア大学に「ドナルド・キーン日本文化センター」設立。アメリカン・アカデミー会員(文学部門)に選ばれる。
  • 1988年8月1日、国際演劇協会歌舞伎ワークショップ、「歌舞伎における改作の功罪」、 10月8日福井県武生市文化センター、第1回源氏物語アカデミーで「『源氏物語』と私」を講演。11月5日埼玉県草加市における奥の細道国際シンポジウムで「『奥の細道』の世界」を講演。11月24日京都・国際日本文化センター特別公開講演会で「平安後期の物語の新しさ」を講演。
  • 1996年9月21日大阪青山短期大学において「近世の演劇」について講演。
  • 1998年11月6日早稲田大学総合学術センター国際会議場で「近松と私」を講演。早稲田大学より名誉博士号授与。
  • 2009年6月、復活上演を提案した古浄瑠璃「越後国・柏崎 弘知法印御伝記」が「越後猿八座」により、柏崎産業文化会館ホールで初上演。
  • 2010年10月末、古浄瑠璃「越後国・柏崎 弘知法印御伝記」の東京公演実行委員長を務め、東京朝日ホールで上演
  • 2011年4月26日、コロンビア大学にて最終講義(能について)。9月13日平泉毛越寺にて作家、平野啓一郎氏と対談。(BSーTBSドキュメンタリー番組用収録)。9月24日、松山で講演。「正岡子規論」。11月26日東洋大学にて記念講演。「源氏物語」、12月10日、上野文化センターにて講演。「私の好きなオペラ」日本ベルデイー協会。
  • 2019年2月24日、心不全のため東京都内の病院で死去。96歳

受賞[編集]

  • 1962年、古典ならびに現代日本文学の翻訳による海外への紹介の功績により菊池寛賞受賞。
  • 1969年、国際出版文化賞受賞。
  • 1975年、勲三等旭日中綬章受章。
  • 1983年、山片蟠桃賞[2]、国際交流基金賞受賞。
  • 1984年、『百代の過客』により読売文学賞、日本文学大賞受賞。
  • 1987年10月1日、東京都文化賞受賞[3]
  • 1990年、全米文芸評論家賞受賞。
  • 1991年、福岡アジア文化賞受賞。
  • 1993年、勲二等旭日重光章受章。NHK放送文化賞受賞。
  • 1994年、井上靖文化賞受賞。
  • 1997年、『日本文学の歴史』全18巻完結。朝日賞(人文科学)受賞。東北大学より名誉博士号授与。
  • 2001年、『明治天皇』により毎日出版文化賞受賞。
  • 2002年、文化功労者に選ばれる。
  • 2006年、東京都名誉都民、北区名誉区民となる。
  • 2008年、文化勲章受章[4]
  • 2010年、第5回安吾賞受賞。
  • 2012年、コミュニケーション・リーダーシップ賞
  • 2013年、第13回現代俳句大賞[5]
  • 2014年、新潟県柏崎市名誉市民[6][7]

著作[編集]

  • 『日本の文学』筑摩書房、1963年
  • 『ドナルド・キーン著作集〈第1巻〉日本の文学』新潮社、2011年12月
  • 『ドナルド・キーン著作集〈第2巻〉百代の過客』新潮社、2012年2月
  • 『ドナルド・キーン著作集〈第3巻〉続 百代の過客―日記にみる日本人』新潮社、2012年4月
  • 『ドナルド・キーン著作集〈第4巻〉思い出の作家たち』新潮社、2012年6月
  • 『ドナルド・キーン著作集〈第5巻〉日本人の戦争』新潮社、2012年8月
  • 『正岡子規』新潮社、2012年8月
  • 『ドナルド・キーン著作集〈第6巻〉能・文楽・歌舞伎』新潮社、2013年1月
  • 『日本文学散歩』朝日新聞出版、2013年3月
  • 『続百代の過客(下) 日記にみる日本人』朝日新聞出版、2013年3月
  • 『続百代の過客(上) 日記にみる日本人』朝日新聞出版、2013年3月
  • 『私が日本人になった理由 日本語に魅せられて (100年インタビュー)』PHP研究所 2013年4月
  • 『ドナルド・キーン著作集第七巻 足利義政と銀閣寺』新潮社、2013年5月
  • 『ドナルド・キーン著作集第八巻 碧い眼の太郎冠者』新潮社、2013年8月
  • 『ドナルド・キーン著作集第九巻 世界のなかの日本文化』新潮社、2013年11月
  • 『日本の俳句はなぜ世界文学なのか〈FUKUOKA U ブックレット6〉』(共著:ツベタナ・クリステワ)、弦書房、2014年6月
  • 『ドナルド・キーン著作集第十巻 自叙伝 決定版』新潮社、2014年6月
  • 『ドナルド・キーン著作集第十一巻 日本人の西洋発見』新潮社、2014年12月
  • 『ドナルド・キーン著作集第十二巻 明治天皇〔上〕』新潮社、2015年7月
  • 『二つの母国に生きて (朝日文庫) 』朝日新聞出版、2015年9月
  • 『ドナルド・キーン著作集第十三巻 明治天皇〔中〕』新潮社、2015年11月
  • 『石川啄木』新潮社、2016年2月
  • 『ドナルド・キーン著作集第十四巻 明治天皇〔下〕』新潮社、2016年、9月
  • 『ドナルド・キーン: 知の巨人、日本美を語る! (和樂ムック)』小学館、2017年6月

英語[編集]

  • ”The Battles of Coxinga: Chikamatsu's Puppet Play, Its Background and Importance”(Mark van Doren (序文)) Cambridge University Press、1951年1月
  • ”Japanese Discovery of Europe: 1720-1830” Stanford Univ Press; 2nd版、1969年6月
  • ”Japanese Literature: An Introduction for Western Readers” チャールズ・イ・タトル出版、2017年5月
  • ”Modern Japanese Literature: An Anthology” Grove Press、1956年6月
  • ”Living Japan” Kessinger Publishing、2010年9月
  • ”Major Plays of Chikamatsu (Hardcover)” Columbia University Press、1962年
  • ”On Familiar Terms: A Journey Across Cultures (Kodansha globe series)”、 Kodansha USA Inc 、1994年1月
  • ”The Pleasures of Japanese Literature (COMPANIONS TO ASIAN STUDIES)” Columbia Univ Pr; Reprint版、1993年3月
  • ”No and Bunraku: Two Forms of Japanese Theatre” Columbia Univ Press、1990年12月
  • ”Some Japanese Portraits”、Kodansha USA Inc; Reprint版、1983年8月
  • ”Noh: Classical Theatre of Japan”(Kaneko Hiroshi (写真)) Kodansha America, Inc; Revised版、1978年1月
  • ”Twenty Plays of the Noh Theatre” Columbia University Press 、1970年10月
  • World Within Walls: Japanese Literature of the Pre-Modern Era, 1600-1867 (History of Japanese Literature, Vol 2 (Paper))
  • ”World Within Walls: Japanese Literature of the Pre-Modern Era, 1600-1867 (History of Japanese Literature, Vol 2 (Paper))” Columbia Univ Press; Revised版 1999年10月
  • ”Japanese Portrait Sculpture (Japanese arts library)” Kodansha USA Inc、1977年9月
  • ”Some Japanese Portraits” Kodansha USA Inc、1979年3月
  • ”Dawn to the West: Japanese Literature of the Modern Era; Fiction” Holt Rinehart & Winston、1984年4月
  • ”Dawn to the West: Japanese Literature in the Modern Era; Poetry, Drama, Criticism (Owl Books)”Henry Holt & Co; New版 、1987年9月

翻訳[編集]

  • Four Major Plays of Chikamatsu (UNESCO Collection of Representative Works. Japanese Series)、(Monzaemon Chikamatsu)、Columbia Univ Press、1997年9月

脚注[編集]